初夏

仕事に追われ波乗りもできず、社会の波に乗りっぱなし。

波情報や波乗り仲間からは、しばらくの間そこそこいい波が途切れず続いているとのことだった。

明日こそはと思い、仕事が一区切りのタイミングで朝4:00に目覚め、ボードやらを車に積み込み海へ向かった。

いつも混み合う街の早朝は車通りも少なく、朝靄に反射する信号機の色が幻想的ないつもの街。

お気に入りのマイカーと朝の雰囲気に合う音楽を選びながら窓を全開に開け、夏の朝の貴重な涼しい風を感じながら海に向かう。

一時間ほどでいつものホームポイントに到着する。

顔馴染みのローカル達と情報交換や近況を話しつつボードにワックスを塗り、サーフトランクスに着替え海へ入った。

朝の混み合う時間帯、良い波を選び取り合う最中、おもむろに一人アウト(沖)へ向かった。

数百メートル程行った所は私1人だけの世界に場面が変わり、パドリングの水をかく音と、波の音だけだ。

海面から数十センチの場所は地球上で最も綺麗に澄みきった濃い酸素が味わえるエリアらしい。

私は波に乗らず、ボードに跨がり波待ちをしながら空を見上げ、動きの違う雲や飛んでいる飛行機を見たり、水面に浮く海鳥や遠く地平線・海岸線を眺めたり、大きく深呼吸したり、ほんのり冷ややかな夏の海水温を身体で感じエメラルドグリーンが透き通る海を満喫しつつ自然のありがたみを身体全体で吸収していた。

よくよく考えてみると生まれて50年の月日が流れ、その中でもこの様な時間は数える程しか味わえない訳だ。

こんな貴重な時間を過ごせる事に、心からサーフィンを続けて良かったなと改めて思う。

心身共に普段のストレスから解放され、リフレッシュさせてくれる海には心から感謝したい。

あと何十年味わえるだろうか?

初夏の印象的な夏の朝になった。

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